税理士を変えてすぐに税金が安くなった!?
先日、お客さんからの又聞きで、このような話がありました。
どうやら、決算近くにコロナの不安もあり、顧問税理士を変えたら、税額が50万ほど安くなったそうです。
ほかにもこのような方がいらっしゃるようでしたら、是非「次回、もしくは次々回の税額」まで、喜ぶのは待ってください。
目次
税金が減ったと思う理由
「喜ぶのは待ってください」は、すこし言い過ぎかもしれませんね。
「準備をしておいてください」が正しいです。
税金計算も税理士業務も経理処理も、別に魔法でもなんでもないので、このタイミングで税額が減った原因はおおむね以下のうちのどれかです。
①昨期の利益が高かったため、予定納税額(前払)が大きかった。
②変えた税理士がなにかしらの経理処理の変更を行った。
③消費税の計算方法を災害特例で変えた。
結論から言うと、
①と②とは、今回の支出が少ないだけです。
次回、次々回はいままで同様、もしくはいままでより高額になります。
(しかし、これも今の社会状況ではとにかく支出を減らしたいと思いますので、次回、次々回の納税の準備さえしていれば、良いことです)。
消費税の計算方法の変更とは?
③は、今しか使えないため、とても「税理士が仕事した」感はありますが、
変更した計算方法には変更後の2年継続要件がありますので、
税理士さんがこのこと(2年間変更できないこと)まで伝えてくれているかどうかの確認もしてみてください。
消費税の試算は基礎さえわかっていれば会計ソフトで自動でできるので提案しやすいですが、その後まで考えると必ずしも良いとは限らないため注意が必要です。
以下、専門的な話になるため話半分で聞いてください。③の詳細です。
消費税の原則課税と簡易課税
消費税の計算方法には主に2つあって、
・原則課税計算
・簡易課税計算
です。
原則課税計算は、純粋に取引のうち預かっている消費税と支払った消費税とを相殺し、1年分の精算を行う方法です。
簡易課税計算は、1年間の売上総額のうち、業種により予め決められた割合で消費税を納める方法です。
例えばですが、
業種…建設業
※金額は税込です
売上3,300万円
材料330万円
外注1,980万円
販管費で消費税のかかるもの33万円
です。
原則計算の場合87万円
簡易計算の場合90万円
と原則課税の方が有利です。
この計算方法の切り替えは本来であれば期首までに済ませておく必要があるのですが、いまだけコロナの影響で後出しで切り替えできます。
ちょっとした説明不足に気づかない落とし穴
しかし、この方法の切り替えは「切り替え後2年間はその方法を継続する」ルールがるため、もしこのタイミングで原則課税を選んだ場合、来期も原則課税で計算する必要があります。
ここでお客さんごとの個別事象を考えなければいけないのですが、
このお客さんの場合、いわゆる下請けに該当し、孫請けの外注さんの外注費率が一時的に上がっているため、今回のような計算結果であって、
通常であれば外注費率は50%ほどでした。
売上・材料費率・販管費率が変動ない見込みの場合、来年は
売上3,300万円
材料330万円
外注1,650万円
販管費33万円
と仮定されます。だとすると、
原則→117万円
簡易→90万円
になり、2年間では
原則87万+117万=204万
簡易90万+90万=180万
なので、簡易課税の方が長い目で見ると納税額は落ち着きます。
また、原則課税は強制継続の規定が複数あり、わりと事務処理の多い部分もあるため、税理士報酬が上がったり・税務調査で細かく見られたり、、、といったリスクもあります。
しかし今のご時世、、、。
とはいえ、「コロナの影響でいつ元通りになるかわからない」という不安もあるため、
もちろん、税理士の提案としてはお客さんのためになる部分もあると思います。
問題があるとすると、この状況で「社長!!税金安くなりなすよ」とだけ言う人です。
そんな税理士おるんかい と言いたくなりますが、「リスクの方を強調できず、十分に伝わっていない」ことはありえます。
とりわけ税理士本人ではなく従業員さんが訪問しているタイプの税理士事務所の場合、結構高い可能性でありえます。
消費税の計算方法の変更により税額が減少する旨の提案をされた場合には、「その時」はもちろん。「その後」のことまでしっかり説明してくれる税理士さんを信用してください!!
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